LANCIA STRATOS HF

ランチャ・ストラトス HF

WRC(世界ラリー選手権)で勝利することを目的に開発された史上初のパーパスビルドカー。’70年のトリノショーに出品されたベルトーネのショー・カー「ストラトス・ゼロ」を、コンセプトごとランチアが買い上げ、二社共同で開発された。
ストラトスの産みの親はベルトーネであり、ランチアである。だが、ラリー界を席巻するこの車の出生で忘れてはならないのが、当時のランチアのラリー部門監督、策士チェザーレ・フィオリオである。

フィオリオは「ラリーで勝てる車、ラリースペシャル」だけを念頭に奔走する。エンジンはフェラーリからディーノV6ユニットの供給を受けるべくフェラーリ総帥のエンツォに直談判。ラリー競技出場のためにクリアすべき生産台数を水増しともとれる強引な手法でクリアする、などなど。フィオリオの並々ならぬ情熱がこの車には込められている。
ボディは極端なショートホイールベース、そしてワイドトレッド。真っ直ぐ走らせることは困難至極、しかしコーナーでの安定性は群を抜く。当時のランチアのエース・ドライバーであるサンドロ・ムナーリの技量がうかがい知れる。

WRCに実戦投入されたストラトスは、他の追随を許さず1974年〜76にかけて3連覇の偉業を成し遂げる。ラリーで勝つことだけを目的に開発された異端のモデル、ストラトス。
市販バージョンであるストラダーレの生産台数は僅か490台前後と言われている。ラリーでは成功を収めたが、商業的には失敗の烙印を押され、第一線を退くその姿もまた異端に相応しい幕引きである。

by Hiroshi Tanaka